『さよならも出来ない』

第17回 TAMA NEW WAVE コンペティション グランプリ&ベスト女優賞 受賞

trailer 予告編

introduction イントロダクション

わたしたちをつなぐのは、
二人を別つ境界線。

京都から新たな映画を発信する人材育成事業「シネマカレッジ京都」(主催:京都市、シマフィルム株式会社、株式会社映画24区)で行った俳優ワークショップに集った参加者が中心キャストとなり、講師の松野泉がオリジナル企画で臨み、本作を制作。映画において「演技」とは何なのか、映画のなかでいかに「存在」するかをワークショップのなかで考え、制作準備期間にも各キャストのリハーサルを重ねて撮影を行った。

「二人の男女が恋人としては別れても同居を続けている」という状況と、その周囲の人々のざわめきを、キャストの存在をじっと見つめるような視線で描いた作品です。人が人と関係し続けることの困難さ。境界線は、人を分かつだけでなく、人をつなぐラインでもあること。目の前の手の届く世界のなかで、ささやかな希望を見出す意欲作です。

Director’s Message

この作品はワークショップを経て製作されました。出演者と共に、お芝居を通して他者と向き合うとはどういう事なのか思考を重ね、演技するという事に対して技術論ではなく、その人自身の在り方として立ち向かう方法はないかと模索を続けました。この作品を通して、たくさんの魅力的な人物に出会いました。それは、出演者自身でもあり、この物語という時間を共有する事で産まれた「初めまして」の誰かでもありました。この作品を観た人達の中に、思いがけない出会いの瞬間がもたらされる事を心から願っております。

story ストーリー

香里と環は別れてから3年も同棲生活を続けている。友人や周りの人間からは関係をはっきりさせた方が良いと言われるが、家の中に境界線を引き、ルールを設け、恋人、友人でもない生活は続いている。そんなある日、環は会社の同僚の浩に食事に誘われ、香里も同僚の紀美から思わせぶりな態度を示される。さらに環の叔母夫婦が二人の状況を探りに来る。二人はなぜ離れられないのか、別れるとはどういう事なのか。決断の時が訪れた。

cast / staff キャスト・スタッフ

出 演

野里佳忍、土手理恵子、上野伸弥、日永貴子、長尾寿充、龍見良葉
余部雅子、柳本展明、上西愛理、今井理惠、宮前咲子、篠原松志、田辺泰信、堀田直蔵、辻凪子

スタッフ

監督・編集:松野泉
撮影・編集:宮本杜朗/美術:塩川節子/録音:斎藤愛子/制作:鶴岡由貴
録音・助監督:斗内秀和/メイク:森島恵/音楽:光永惟行/WEB制作:境隆太/デザイン:中西晶子/プロデューサー:田中誠一

2016年/HD/STEREO/76分 制作・配給:シマフィルム株式会社

監督プロフィール

松野泉Izumi Matsuno

1982年生まれ。2004年大阪芸大卒。大学入学より、短編映画や音楽の製作を開始。2006年、自主制作で『GHOST OF YESTERDAY』を監督。第30回ぴあフィルムフェスティバル(2008年)にて審査員特別賞、企画賞を受賞。長編第2作として2007年にCO2企画助成作品『YESTERDAY ONCE MORE』を監督。
2013年よりシネマカレッジ京都の俳優コース講師をつとめ、本作『さよならも出来ない』は受講生が出演する終了作品として制作された。
映画録音(整音)技師としても『Dressing Up』(2012年/安川有果監督)、『SAVE THE CLUB NOON』(2013年/宮本杜朗監督)、『ハッピーアワー』(2015年/濱口竜介監督)、『お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいました』(2015年/遠藤ミチロウ監督)、『函館珈琲』(2016年/西尾孔志監督)などに参加。
また、ミュージシャンとしても活動し、1stアルバム「星屑の国」をリリースした。

news お知らせ

〈PFF大忘年会 in テアトル新宿〉にて上映決定!

「PFFの番外篇」とも呼ばれるイべント、〈PFF大忘年会〉が”日本映画の殿堂”テアトル新宿にて開催。企画満載のオールナイトとレイトショーで構成される2017年末の7夜に、『さよならも出来ない』が登場します。
劇場で本作を観て頂ける貴重な機会です。ぜひご関心ください。
 
▼12/22(金)21:10~ @テアトル新宿
ワンピース・チャレンジャー監督 特別上映
『さよならも出来ない』+『無言日記2016』(三宅唱監督)の2本立て

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★松野監督作、『さよならも出来ない』キャスト陣登場の「ワンピース!チャレンジ」作『大航海時代』の上映もあります!12/16(土)22:00からオールナイト!詳細は下記リンク先へどうぞ。

▶〈PFF大忘年会 in テアトル新宿〉詳細はこちら◀
 
 

★チラシ画像です。クリックすると拡大表示します。

theater 劇場情報

兵庫

元町映画館

2017/10/7(土)〜10/13(金)連日18:50〜
東京

『さよならも出来ない』東京公開記念特集企画〈音も、映画も、さよならも出来ない 松野泉の仕事〉@K’s cinema

2017/9/9(土)〜9/15(金)連日20:50 イベント情報
東京

K’s cinema

2017/9/9(土)〜9/15(金)連日19:00 イベント情報
大阪

第七藝術劇場

2017/8/26(土)〜9/1(金)連日20:45〜 イベント情報
京都

立誠シネマプロジェクト

2017/6/24(土)〜6/30(金)連日17:25〜 イベント情報

comment コメント

松野くんの映画は女子がみんなかわいい。そしてちょっと怖い。ちょっと怖いってとこを見つけるのが、松野くんはとてもうまい。他の人にはマネできない才能だと思う。

いまおかしんじ (映画監督)

傑作だ、と思われる映画の記憶たちは決まって不意に僕の生活に顔を出してくるものです。映画を見ている時には僕の外側に在った世界が、見終えた瞬間から、いつ何が羽化するか分からない卵のように僕の内部に埋め込まれてしまったかのよう。松野さんの映画『さよならも出来ない』の数々のシーンも、既に僕の記憶の残像として現れることがあるのです。

世間は白黒をつけたがる。一見合理的であるような価値観が渦巻く世界。その薄皮を一枚剥いで広がるこの世界の柔らかさ。登場人物たちは前に歩み続ける。決して声高にではなく、そっと、確実に心に入ってくる光、言葉、音を紡いで。

松野泉という監督の誠実さ、持久力を見せつけられた作品でした。
一人でも多くの人にこの作品を見て欲しい。そう切に願っています。

野原位 (『ハッピーアワー』共同脚本・プロデューサー)

『さよならも出来ない』に出てくる若い人達は、他者を思いやるばかりに孤独であることしか出来ない。
穏やかで優しい人達の緊張感は、笑みを浮かべて観てもいいものか、戸惑うくらいの実在感があり、胸が苦しくて息も出来ない。
同時に、他人の営みを覗いている私の中で、過去と現在の私の物語が、問答となって掻き立てられてくるので、まばたきも出来ない。

この問答が、映画を見ている時間と同時並行で出来る理由は、『さよならも出来ない』に、どこからか聴こえてくる音楽と音があり、それが隙間を見つけて広げて延ばすからだ。

足を揃えてでないと進めないほどの狭さにパーソナルエリアが仕切られた、別れた二人が3年間同居する部屋にも、音はどこまでも隙間を見つける。

音だけが、孤独な人達と、人達に対峙する画とを、希望をもって見つめている。こんな気配は、この映画でしか出来ない。

鈴木卓爾 (映画監督・俳優)

画面内に横溢する「線」に囲まれ窒息寸前。リリカルに見せながらこれって、「線」に囚われホワイトゾンビになっていく過程を描いたホラー映画じゃないか?息を吹き返すためには一度フレームの外に出てみるしかないのかもしれないね。ワンワン。

黒川幸則 (映画監督『VILLAGE ON THE VILLAGE』)

別れても、最小限のコミュニケーションで一つ屋根の下に暮らし続ける男と女。
ドライで、不器用で、さよならも出来ない、まさに現代的な二人だ。
でも、誰かを好きになり、恋しくて、切なくて、あなたに触れたい気持ちは、昔も今も何ら変わることはない。
この映画は、男女の今と普遍を描き出した、キュートでちょっと奇妙な恋愛映画である。

中野量太 (映画監督『湯を沸かすほどの熱い愛』)

あるカップルのすれ違いを軸にしたこの映画は展開は控えめだが世界に散りばめられている音の数々を繊細に拾い上げていて、それを音楽の様に構成していると感じた。その中で、例えば、主人公の自宅の窓の外、車が通り過ぎた後の静寂を聞いている時、私はこの映画の世界で吹いている初夏の風の匂いを感じた様に思えた。

大内伸悟 (映画監督『知らない町』)

松野泉という才能が関西にひそんでいることは、昔から知っていたのですが、今回改めて、なんて上手に品のいい映画を作る人だろうとつくづく感心しました。

『さよならも出来ない』ということを、どんづまりには決して見せないまなざしに、松野くんの優しいハードボイルドを感じました。

七里圭 (映画監督『眠り姫』)

映画的記憶。風に舞う木の葉。誰かを想う気持ち。
松野監督の作品が好きだったことを思い出した。

矢崎仁司 (映画監督『三月のライオン』『無伴奏』)

実在の人物が出ていると“錯覚”を感じる映画である。
土手理恵子の瑞々しさに恋の“錯覚”に落ちる映画である。
現代の若者の実態を描いていると“錯覚”を起こす映画である。
だとしたら松野泉の映画監督としての手腕を信じていい。

星野秀樹 (映画プロデューサー『そこのみにて光輝く』『オーバー・フェンス』)

この映画の「正直さ」が好きだ。

はっきりさせることができない人間関係とそこに生まれる感情――常識で考えればさっさと整理してしまったほうがいいことを前にして、この映画は「ちょっと待って」と問いかけてくる。この問いかけは、松野監督が怖いぐらい「正直さ」をもって映画を作ろうとしているからだと思った。自分たちの関係を世間が納得するような言葉で説明しようとしない主人公男女の存在は、最初は嫌になるぐらい辛気臭いのだが、物語が進むにつれてとても清々しいものに感じられてくる。ふと気づけば、自分のなかの常識にも風穴が開けられているではないか。そんな清々しさと大胆さがこの映画の魅力だと思った。俳優たちのセリフの発し方も、棒読みと言えば棒読みに近いのだが、余計なものを纏っていないから清々しくて力がある。

物語の終盤、主人公たちは自分らの境界を必死に越えようとし始める。常識を超える気持ち良さだけで終わらせずに、その先にも松野監督は力のあるボールを投げ込んでくる。ボールの行き先にあるのは「愛」だった。びっくりするぐらい真っ直ぐに松野監督が「愛」を描こうとしている。少々意外な感じもしたが、嬉しかった。「触りたい」――ヒロインの声は「愛」に震えている。今までとは違う何かが始まったようだ。それはとても美しいことだった。

谷口正晃 (映画監督『時をかける少女』『父のこころ』)

現実的で、実直で、繊細なふたりを
ぼくのラブストーリーの夢にしたい。

26歳・映画館スタッフ

人は思ったことを全部口にするわけではないし、自分で自分の気持ちが分かっていなくて後から「私ってこう思ってたのかな」と分かるときすらありますよね。外から「気持ちをはっきり言いなさい!」と言われても、モヤモヤの繭の中にいると何も言えなくて、それでも、じんわり見守って背中をツンツンしてもらうと気付いていなかった本心が自分の口から出てくることもあるのかなと、環ちゃんを見て思いました。

39歳・女性

二人の揺れる心と、周囲の人々のとのギャップがなんか面白くて、感情移入してやきもきしながらも吸い込まれました。面白かった。もう一度観たいと思わせる映画でした!

32歳・会社員

静かに吐かれる言葉達が、音が、見る者の心をバラバラにし、再び優しく縫い合わせてくれる。

25歳・男性

ラストがめっちゃ普通で、その普通さが逆にすごい気持ち悪くて、あっこれ最高のやつだ、と思いました。

29歳・靴修理店店主・歌手

観ているうちにスクリーンという境界線を超えて彼らの背中をトンっと押してやりたくなる不思議な作品。

36歳・男性

この映画の画調(撮影)はなにやら爽やかで、そのコンセプトが私はとても好きです。キャスティングがとてもよくて、皆自然な演技なので、話の結末を予測できない。それがある意味でこの物語を独特なものにしています。
だから、彼/彼女の愛の行方がどうなるのか、映画の先の第二章を知りたくなるのです。

30代・女性

周りを取り巻く人達とは対照的に、香里と環が感情をあまり表にださずやきもきしたので、最後の結末にはすごーく驚いた!映像もきれいで音楽も良くてほっこりした気持ちになる映画でした!伏線もたくさんあって細かいところまでじっくり見るとより楽しめました!

20代・カフェ店員

(友人が出演しているという)贔屓目なしでおもしろかった!リアルなんやけどセリフとか独特のテンポがどっか空想的で、なんか良質の詩を体感してるような気にもなり。染みいるような映画でした!また、あの2人やから出せた距離感、空気感も良かった。

28歳・女性・会社員

当たり前だけど役者がそこにちゃんといる。だから松野さんの映画、好きやな~!

39歳・女優・主婦

静かなやり取りの中から、それぞれの登場人物の確かな存在と心情の揺れが伝わってくる。
記憶に残る映画です。

男性